透析の話し

第15回 透析合併症 高リン血症 その1《異所性石灰化》

透析関連シリーズも回を重ね、やっと合併症にまでたどり着きました。今回より数回は「沈黙の殺し屋(サイレント キラー)」と呼ばれている高リン血症について見て行きましょう。

腎不全となり腎臓が働かなくなるとリンがうまく排泄されず身体に溜まって、高リン血症となります。高リン血症を長期間ほっておくと色々深刻な合併症を引き起こします。その一つに《異所性石灰化》があります。

《異所性石灰化》とは、骨以外の場所にカルシウムが非生理的に沈着して起こるものです。血清カルシウム値とリン値をかけ算して55以上であれば起こるとされています。このかけ算をカルシウム・リン積といいます。カルシウム・リン積が60以上では異所性石灰化を来たすばかりでなく、死亡率まで増加すると言われています。

《異所性石灰化》は、沈着部位によりさまざまな臓器障害をもたらす重大な透析の合併症です。《異所性石灰化》が血管の動脈に起これば動脈硬化。心臓の血管である冠動脈に起これば狭心症や心筋梗塞を招きます。脳動脈に起これば脳梗塞や脳出血を生じやすくなります。腹部の動脈に起これば透析中の腹痛の原因や虚血性腸炎となり、足の動脈に起これば下肢閉塞性動脈硬化症となり歩行中に足が痛くなって歩行を続けることが出来なくなります。また、血行障害のため足先の傷が治りにくく足先が壊死してくることもあります。

心臓自体に《異所性石灰化》が起これば心不全や不整脈の原因となります。肺に起これば呼吸が障害されて呼吸不全となります。皮膚に起これば皮膚がかゆくなります。また、皮下に《異所性石灰化》による腫瘤ができることもあります。目の角膜や結膜にも起こり、刺激で目が真っ赤になることがあり赤目症候群(レッド アイ)と呼ばれます。関節では関節炎が起こり、痛みが出てきます。

これらは決してオーバーに言っている訳でも、おどかしでもありません。痛くもなんともない高リン血症ですが、皆さんに“元気で長生き”していただくためには、どうしてもリンのコントロールが不可欠です!

次回は二次性副甲状腺機能亢進症についてお話しましょう。 >>つづきを読む。

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